個人事業主がAIと一緒にOKRを設計してみた話
目次
先に本音
個人事業主にOKRは大げさではないか。最初はそう思っていました。
OKRは、目標と、その達成度を測る指標をセットで置く考え方です。大企業が何百人もの組織を動かすための仕組み、という印象もあります。でも実際に自分の仕事を見渡してみると、案件、発信、学び、日々の細かな用事が同じ場所に積み上がっていました。
やることは見えているのに、「これは何のためにやるのか」「今週いちばん先に進めるべきことは何か」が曖昧になる。そこでAIと対話しながら、OKRを設計してみることにしました。
結論から言うと、AIが正解を出してくれたわけではありません。けれど、考える役、確かめる役、最後に決める役を分けられたことで、経営の整理がずっとやりやすくなりました。
なぜ、タスク管理だけでは足りなかったのか
タスクはすでに管理していました。今日やることも、締切が近い仕事も一覧にある。にもかかわらず、朝になると全部を見直さなければならず、どれから手をつけるかで止まることがありました。
原因は、タスクが悪いのではありません。タスクと目的のつながりが見えにくかったことです。
たとえば「提案書を直す」「ブログを書く」「営業先を調べる」は、それぞれ重要です。ただ、売上につながる動きなのか、将来の仕組みづくりなのか、信頼を積み上げる発信なのかが混ざっていると、忙しいほど判断が鈍ります。
そこで、まず「今の自分は何を前に進めたいのか」を言葉にしました。個人事業主の場合、立派な経営計画書から始める必要はないと思います。四半期ほどの期間で、仕事の軸を絞る。それだけでも、日々のタスクの見え方が変わりました。
AIには、答えではなく整理を頼んだ
今回、AIには経営判断を任せていません。最初に頼んだのは、考えを引き出す質問をすることでした。
「いま困っていることは何か」「売上に近い仕事はどれか」「続けなければ将来困る仕事は何か」。自分一人で考えると、つい思いついた順に話が散らかります。AIとの対話では、質問に答えるたびに論点を分け、選択肢として並べ直せます。
そのうえで、OKRの案を複数つくりました。最小限の構成にする案、目標とタスクをしっかり結びつける案、さらに記録や週次レビューまで広げる案です。
ここで大事だったのは、AIが作った案をそのまま採用しなかったことです。「今の自分が無理なく回せるか」を基準に、必要なものだけを残しました。個人事業主の仕組みは、立派さより続けられることのほうが重要です。
役割を分けると、決めることに集中できた
この取り組みでは、AIごとに役割も分けてみました。当時は、対話と設計のたたき台をつくるAIと、設計をレビューするAIを別に置きました。
前者には、対話を通じて考えを広げ、設計の案を出してもらう。後者には、その案に抜け漏れや運用上の無理がないかを確かめてもらう。そして最後に、人間である自分が「どこまでやるか」を決める。この順番です。
とくに役立ったのは、「責任者である人間」と「実行主体であるAI」を分けて考える視点でした。たとえば、AIが下書きを作ったとしても、責任を持って確認し、外に出すかを決めるのは人です。この区別が曖昧だと、便利な仕組みほど不安になります。
AIを使うと、判断まで自動化したくなるかもしれません。でも小さな会社では、AIに任せる部分と、自分で決める部分を最初に分けておいたほうが安心して使えます。AIは考える量を減らすためではなく、判断に使える形へ整えるために使う。私にはこの役割分担がしっくりきました。
最初から、全部は作らなかった
OKRの設計を始めると、進捗率の自動集計やKPIの記録など、いろいろな仕組みを足したくなります。実際、作ろうと思えば作れます。
ただ、この段階では自動集計やKPIログは後回しにしました。最初から多機能にすると、記録すること自体が目的になりかねないからです。
まずは、目標を見返せること。日々のタスクがどの目標につながるかを確認できること。週に一度、手動で少し立ち止まり、次の一手を決められること。この三つができれば十分だと考えました。
経営管理もAI活用も、最初の型は小さいほうが試しやすいものです。続かなければ直す。使いにくければ減らす。うまく回り始めてから、必要なところだけ自動化する。この順番なら、仕組みに振り回されずに済みます。
個人事業主が始めるなら、まずこの3つ
もし同じように、仕事が増えるほど優先順位が見えにくくなっているなら、まずは次の三つだけで十分です。
- 今後3か月で前に進めたいことを二つか三つ書く
- それぞれに「できたと言える状態」を一つずつ置く
- 今週のタスクに、そのどれにつながるかを添える
AIには、目標のたたき台を作らせるよりも、質問役や整理役を頼むのがおすすめです。自分の言葉で答えるほど、目標が借り物になりにくいからです。
そして、最後に残すのは「何をやらないか」です。私自身も、機能を増やす案ではなく、軽く回せる案を選びました。小さく始めて、毎週見直せること。そのほうが、個人事業主の仕事には合っていると感じます。
まとめ
AIとOKRを設計して得た一番の収穫は、AIが経営の答えを出すことではありませんでした。考える、確かめる、決めるという役割を分けたことで、自分が判断すべきことが見えやすくなったことです。
AI活用も経営管理も、最初から完璧でなくて構いません。まずは今週の仕事が、どの目標につながるかを見えるようにする。そこから始めるだけでも、日々の動きは少し変わるはずです。